芸術を通して脳科学を学ぼう(好井 千代)

なぜ人間は芸術を嗜むのでしょうか?音楽、絵画作品などを見るとき、脳はどのように反応しているのでしょうか。この授業は、文系学問の芸術と、理系学問の脳科学を融合した学際的な講義を通して、どの分野の研究においても役立つ「柔軟な考え方やものの見方」を身につけることを目標としています。芸術が脳に及ぼす影響について脳科学の研究成果を学びながら、学生同士の議論を通して芸術の意義を多角的に考えます。

「芸術を通して脳科学を学ぼう」の授業の様子をレポートします。

基礎情報

出席人数(取材時)
23
授業形式
講義, グループワーク, 動画視聴, ディスカッション, プレゼンテーション, ライティング(レポートの書き方)
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テーマの例
独創力について。
シラバス

教員の準備・工夫

授業の内容と進行

最初に授業のアウトラインが説明されます。講義、グループディスカッション、グループ発表およびクラス全体での再思考、という三部構成になっています。およそ30分の講義の後、4~5人でのグループディスカッションが10~15分行なわれます。ディスカッションの後は、各グループが黒板にキーワードを書き、議論の内容を発表します。その後、クラス全体での再思考が行われます。学生の議論や発表の時間が多く取れるよう、時間配分が配慮されています。

今回の授業は、右脳と独創力やひらめきとのリンクを考えるというテーマのもと進められました。これから重要になる力であり、身についてもらいたい力である「ひらめいたアイデアを実現するにはどうすればいいのか」という議題について、教員からの講義や学生自身の経験に基づいて議論し、自分なりの考えを得ることが目標です。人はひらめくとき右脳が活性化するとされています。例えば、サヴァン症候群の人のなかには、右脳を抑制する左脳の働きが弱いため、右脳の働きが発達し、天才的な芸術作品を生み出す人もいます。こうした右脳に関する話の他にも、人と議論したり、リラックスするとひらめきが生まれやすいことなど、ひらめきに関するトピックが紹介されていました。学生個々人が過去の体験を思い出しながら、いいアイデアを得るにはどうすればよいか、自分にふさわしい方法は何かを考えていました。

配布資料

スライド資料と講義内容をまとめたプリント

教員の工夫

様々な学部の学生の興味を刺激し、関心を得るために、最先端で、学術的根拠のある第一級の面白い研究が動画や画像を用いながら分かりやすく説明されます。異分野の学生であっても、理系的な分野のデータが直感的にわかるように配慮されていました。英語の動画視聴の際には、内容を打ち出したレジュメが配られ、キーセンテンスが予め説明されます。

特定の学生だけが発言することのないよう、全ての学生が自分の意見を発言するよう徹底されています。講義で習った学問的な理論を自分の経験と結び付けて話している学生もいました。他分野の人・様々なバックグラウンドを持つ学生と関われるよう、グループメンバーは毎回変わります。今回は、普段ひらめく方法が何か(議論でひらめくグループとリラックスでひらめくグループ)によってグループ分けがなされていました。

  グループワーク以外でも講義中に生徒に質問するなど、学生の発言を重視し、理解を促そうとする授業展開でした。また、グループ発表でも一人ひとりの意見に丁寧に感想や考察が述べられていたり、発表中共感できる意見に「あ~」「わかる!」などのリアクションがされていたことで、教室に活気があふれ、学生同士のコミュニケーションが活発になっていました。また、授業に対するモチベーション向上にもつながると感じました。

学生の行動

学生の様子

講義の間は、レジュメにメモを取りながら、専門的な講義を真剣に理解しようとしている様子が見られました。グループワーク以降は、全体として和気藹々な雰囲気でした。グループワークはとても盛り上がっており、積極的に議論して発表につなげていました。グループ発表では、静かに集中して耳を傾けながらも、時折共感の声や笑いなども起きており、興味を持って発表を見ていることが伝わってきました。また、毎回発表しているためか、話すことに慣れている印象を受けました。