共生の人間学入門セミナー(檜垣 立哉)

大学生になると、専攻に分かれて勉強し、アカデミックになればなるほど人間関係が狭くなっていきます。しかし、社会には様々な考え方・価値観・生き方をしている人がいます。大学では「役に立たない」ことも含め様々な関心・方向性で研究がなされています。同じ哲学でも、この授業の担当教員の所属する人間科学部のほか、文学部や外国語学部といった他学部で様々な角度からの研究が行われています。教員と学生が近い距離で対話することで、学問の多様性や、様々な人とのかかわり・関係性の大切さを学ぶ「共生の人間学入門セミナー」の授業をレポートします。

基礎情報

出席人数(取材当日)
12
授業形式
プレゼンテーション, ディスカッション
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テーマの例
多文化・多様な価値観の共生(外国語学部生のプレゼンテーション)
シラバス

教員の準備・工夫

授業の内容と進行

学生による「共生」をテーマとしたプレゼンテーションの後、各受講生が順番に発言する形でディスカッションの時間がとられました。ディスカッションは気さくで話好きな教員が議論をリードする形で、学生1人1人の発言に対して教員のコメントがよく挟まれました。

配布資料

学生が発表用に作成したPowerPointのスライドを印刷し、配布する。

教員の工夫

年ごとに受講人数に幅(3人~25人)があり、少ない人数の時にのみ可能なスタイルですが、学生の関心に応じて学外に出かけることもあるそうです。理想的な人数は7~8人の少人数だと仰っていました。学生が自由に発言し、様々な分野の人と議論し、その関係性を大切にできる場となるようにすることが目標だそうです。つながりの場として多様な人間関係が構築されることを重視していて、毎年打ち上げも行われます。

 授業は教員や学生の意見交換を中心に進められました。発表する学生に対して、檜垣先生とともに、助教の先生が、細かく相槌をうつ様子が印象的でした。こうした配慮によって、学生が答え・正解のないことに対して考えながら発言する事を待ち、それをみんなが受け入れる場が作られているのではないかと感じました。檜垣先生が仰った、「PowerPointやExcelの使い方よりもまず、コミュニケーションの仕方を学ぶことが大切」ということを議論の場で学ぶことがこの授業のポイントだといえます。

学生の行動

事前課題(予習課題)

発表がある生徒はPowerPointによるスライドの作成、本読み(適宜行う)

事後課題(復習課題)

ネット上の掲示板(Slack)で自主的に議論を行うことがある

学生の様子

机は円形に配置され、授業前から互いに仲良く話していました。共生という一つのテーマについて、様々な所属の学生が様々な視点から意見を出し合っていました。報告者はプレゼン開始早々から他の学生に意見を求め、皆も自分の言葉で活発に発言していました。発表者が話している間、黙って聞くだけでなく勝手に話し合いを始める学生もおり、常にディスカッションが行われていました。学生は相槌等のリアクションを躊躇なく、積極的に行っていました。活発に発言できる場であるため、寝ている学生などはいませんでした。大学生に混じって参加していた高校生も、垣根なく、萎縮することなく発言していました。

 学生が答えに窮する場面でも、教員が論点をフォローし、それが誰かの体験に結びついたりして思わぬ盛り上がりを見せることもありました。そうした展開は必ずしも報告者の計画通りではないかもしれませんが、議論がより深まる「よき脱線」であると感じました。

今年度の出席者は人間科学部・外国語学部・文学部とやや偏っていますが、年度によっては工学部や医学部保健学科、経済学部等と多様な学生が参加するそうです。正規の受講生のほか、助教や高校生、ボランティアで参加している学生もいました。授業運営は助教を中心に自主的になされているようでした。高校生と大学生が活発に話す姿は印象的で、互いにとって刺激になっているのではないかと感じました。