街に出てサイエンスカフェをやってみよう(長野 八久)

様々な災害がある日本。今年に限っても地震、豪雨、台風直撃と様々な災害があり、2011年に起こった東日本大震災からの復興もまだまだ途上です。本来、こうした時には、市民が行政に働きかけ法案や政策に関わっていく必要があります。しかし、現状では、こうした問題は専門家が対処するものとされ、市民は政策に関わることが出来ずにいます。市民が置いてけぼりとなっている状況を改善するため、長野先生は、肩書や権威に捉われず、市民と科学者とが対等に会話する場としてのサイエンスカフェをつくり出そうとしています。街中で実施されるサイエンスカフェに参加することで、市民と科学者の会話の重要性に気づき、科学リテラシーの意味を理解するきっかけとなってほしい。そんな理念のもと開講される「街に出てサイエンスカフェをやってみよう」の授業について、長野先生にお話を伺いました。

基礎情報

シラバス

教員の準備・工夫

教員の工夫

学生は運営を手伝いつつ、サイエンスカフェ自体にも参加します。学生はあくまでもサイエンスカフェの参加者の一人であり、学生向けの授業としてサイエンスカフェが実施されるわけではありません。学生はサイエンスカフェに参加後、1週間以内に、科学者と市民の間にどのような会話があったかレポートにまとめる課題が出されます。それを通して、サイエンスカフェの意義を感じてほしいとのことでした。

政策判断に関わることができる程度の科学的知識を持つことは、民主主義の中で必要不可欠です。近年の科学的要素の絡む問題について、市民がその政策に関与することの必要性を感じること、会話をすることで市民の科学リテラシーを養うこと等を目的としてサイエンスカフェが実施されます。そのほかにも、大学教育が商品化され経済原理に飲み込まれている現状を知ることや、地域の課題を議論することも行われます。たとえば南海トラフ地震の大阪における被害がテーマの際、行政の防災担当者にも参加してもらう等、リアルな議論を行うための工夫もなされています。

 市民と科学者が直接対等に会話できる環境を実現するため、商店街に出て実施しているそうです。ホールでのセミナー形式にしてしまうと、関心のある人が科学者の有難い話を拝聴するだけで終わってしまいます。相手が大学教員であっても、専門外のことに関しては市民の方が分かっていることもあります。大学教授には何も言えない、権威で怯むということがないように、そういった存在ではないことを知るきっかけにもなってほしいとのことです。市民が主体となって科学者を質問攻めにする場をつくり、どんなことを市民が感じているのかを気づく機会になってほしい、またその必要性を感じてほしいとのことでした。

学生の行動

様々な学部の学生が履修していますが、最近は理系の学生が多いそうです。もっと文系の学生にも来てほしいとのことでした。

事後課題(復習課題)

レポート(どのような会話があったか、それは科学リテラシー形成の上でどう役立つかをまとめて1週間以内にメール提出)