池坊専好氏講演会を開催しました
華道家元池坊 次期家元 池坊専好氏講演会 「日本のアイデンティティーと国際社会」
平成30年度新設 先端教養科目「女性リーダーとの対話」 第1講
平成30年10月9日(火)、大阪大学会館にて、華道家元池坊次期家元の池坊専好氏の講演会を開催いたしました。この講演会は、今年新設された先端教養科目「女性リーダーとの対話」の記念すべき第1講ということで、大阪大学会館での公開講義として行われました。受講している学生の他、西尾総長や理事、教職員、さらに華道家元池坊の関係の方々も来られ、総勢325名と広い大学会館が満席になる盛況ぶりでした。
まずは、主催する当機構の佐藤宏介機構長(大阪大学副学長)より、先端教養科目「女性リーダーとの対話」および池坊専好氏の経歴などをご紹介いたしました。専好氏は、華道家元池坊の次期家元でいらっしゃるとともに、京都の六角堂として有名な紫雲山頂法寺の副住職も務めておられます。長い池坊の歴史の中で初めての女性家元ということで、「女性リーダーとの対話」の初回の講師をお願いいたしました。専好氏は、「命を生かす」という池坊いけばなの精神に基づいて、アイスランド共和国名誉領事として日本との友好親善に尽くされたり、ニューヨークの国連本部において世界平和を祈念し献花を行うなど、国際的にも多彩に活動してこられました。
ご講演ではご自身のこういった活動を紹介されたうえで、国際的な活動と池坊の長い歴史が見事に調和することを、池坊の「命を生かす」という言葉を通して聴衆が納得する形で説明されていきました。まず、華道には「命のありとあらゆる状態を美しい」とする考え方があることを紹介され、一つの作品にいろいろな個性が調和しているからこそ美しいことが示されました。華道では、瑞々しい花だけでなく、枯れた葉にまで個性が認められます。違うもの、相反するものが共存する作品は、大自然の縮図でもあります。これらの点から、現代社会において必要とされている「ダイバーシティ」の考え方が、華道では1000年以上前から体現してきたことがわかります。そんな華道を究めた専好氏だからこそのお言葉からは、長い歴史に支えられた日本のアイデンティティーと国際性が見事に調和することが伝わってきました。このような華道の考え方と国際的な活動のつながりを踏まえて、専好氏の活動がさらに紹介されました。氏が国連で献花を行われた背景には、多様性を認める華道の精神があることがわかりました。
ご講演の後には質疑応答の時間が設けられ、4名の学生から質問がありました。芸術での評価のあり方を問う質問や、実家で花屋を経営している母親に何か一言、という質問など、多様な質問に専好氏は丁寧に答えておられました。ご講演の中で専好氏は「いけばなと言うと花嫁修業」という観念は過去のものであると仰っておられましたが、実際に、専好氏のご講演はすべての学生にとって心を揺さぶられるものであったようです。専好氏のご尽力を賜り、盛況のうちに第1回講義を終えることができました。